走って嵌る、ランニング沼

何故毎日走っているんだろう。

速くなりたいから。

レースに向けて調整したいから。

今よりも楽に走れるようになりたいから。

無心になりたいから。

身体のコンディションを確認したいから。

シューズの感触を確かめたいから。

ランニング仲間に負けたくないから。

自分の立てた目標をクリアしたいから。

「・・・部活生?」

いいや、違う。
今年30歳になる会社員だ。
いっちょ前に役職なんかももらっている。

高校・大学とバンド活動に明け暮れてそのまま社会に出た、運動からは離れて久しい人間をこうも魅了するランニングという沼について今日は語りたいと思う。

ランニングとの出会い。

2021年1月。

コロナ禍真っ只中。
妻の闘病を支える日々。

そんなタイミングで始めたのが週一回のランニングだった。
朝は弱いし夜は時間が取れなかったので、土日どちらかで妻の調子がいいタイミングでサクッと走りに行く。

当時住んでいた場所から近かった多摩川の河川敷を一時間ほど走る。
闘病者を支えるためには、自分の身体と精神を健康に保つ必要があった。

そこで導かれるようにランニングを始めた。

煙草を辞めて何年か経っていたこともあり、最初から意外と10kmほど走ることが出来た。
この初回の成功体験は大きく作用したように今でも感じている。

寒い冬でも一時間動き続ければそれなりに汗をかく。
汗をかいて生を実感する効果も得られていた。

ランニング中に見たものや気づいたことを妻に報告する。
マンションと病院との往復くらいに限られる妻の生活にローカルな情報を吹き込む役割も担ってくれていた。

調子に乗って毎週徐々に距離を伸ばしていく。
半年経つ頃にはハーフマラソンくらいの距離を走れるようになっていた。

振り返って書き連ねている 闘病記 から抜粋するが、当時の私にとって大事なルーティンになっていたようだ。

“ランニングを続けられたのは精神的にも肉体的にも大きかったと思う。
もともと体力には自身がある方だったが、精神面の均整化と体力面のベースアップをする時間を習慣的に取るようになったことでやり切れたところは少なからずあると思っている。

苦しいときに無意識化でやりたかったことが顕在化してきたらそれは多少無理をしてでもやった方がいい。
そう感じる体験だった。”

娯楽はあまり多くない|nakanoryo
2021年1月末 手術を終えて少し経って妻からの返信がきた。 無事ICUから通常病棟にある病室へ移動が出来たようだ。 手術で開いたお腹が痛くて着替えられないから、着替えはあまり必要ない。 週末に帽子と肌着を持ってきてくれれば大丈夫。 そう伝...

こうしてランニングと出会い、それは習慣化していった。

出会いと別れ。

2021年9月。

子宮体がんで闘病していた妻が息を引き取った。

妻を亡くしてからも、習慣化されていたランニングは継続していた。

生を噛み締めて無心で走っていた。

用賀から砧公園方面に向かい、世田谷通りをひたすら西に進む。
狛江に出て多摩水道橋を渡り登戸へ。
多摩川沿いを下って二子玉川に戻ってくる。

妻を亡くして最初に走ったそのコースのことを強烈に覚えている。
自分の人生がこれからも続いていくことを思い知らされた。

こうして、妻との別れを経ても、闘病中に出会ったランニングは続けていた。

レース出場。

2022年2月。

胸に空いた穴を埋めるというわけでもなく、淡々と走る日々は続いた。続けた。

友人との会話の中で、「マラソンとか出ないの?」という問いかけがあった。

ああ、そうか。
そういうのがあったな。

右も左もわからないけどやる気だけはあった私はすぐに手頃なフルマラソンにエントリーした。

当時、中距離以上の一般的な陸上競技は800mと1500m、そしてフルマラソンの3つしかないと思っていた。
なので迷わずフルマラソンにエントリーした。

フルマラソンまでの最長ランニング記録は25kmで、それ以上の距離は未体験ゾーンだった。

結果としては3:46:03と、ランニング歴1年で初めてエントリーしたフルマラソンとしてはいい結果で終わることが出来た。

しかし反省点は山盛り。
自身の伸び代を再認識出来たので、燃え尽きることはなくその熱は温度を増していった。

ここでランニング沼に両足を突っ込んだ。そんな自覚がある。

出会いが繋げる新たな出会い。

2022年3月。

フルマラソン出走から1ヶ月経った頃。

今まではひとりで走っていたが、グループランというものがあることを知り、勇気を出して参加してみることにした。

既に形成されたコミュニティにひとりで飛び込むのは勇気がいる。
しかし、コツコツ走ってる人の集まりであれば仮に話が合わなかったとしても得られるものはあるだろうなどと自分を説得しながら参加した。

今まではひとりよがりにランニングを楽しんでいた。

グループランをきっかけに人と、ランニングの楽しさを共有する喜びを覚えてしまった。

個人競技であるが故に、個でしか楽しめないものとして捉えてしまっていたがまったくそんなことはなかった。

互いに”少しだけ”干渉し合いながら共に高め合う感覚は不思議と心地いい。

気がつけば今月で丸一年通っている。
52週間のうち70%は通ってるから、少なくとも35回は仲間と顔を合わせている。
それだけではなく、有志による練習会や一緒に出走するレース、飲み会を考えると多い人だと50回は会っているのだろう。
50回/365日=7.3日に1回のペース。

大人になるとコンスタントに会える友達は少なくなるのでとても貴重だ。
仲間の存在にはいつも感謝している。

全員で自己ベスト出して思いっきり喜びを分かち合いたい。

ランニング仲間の存在が私をランニング沼に沈没させてくれた。
頭頂まで沈んでから見えたこの景色を存分に楽しもう。

尚、グループランについては、通いはじめて日の浅いタイミングで以下の記事で語っている。

人は集まり、共に走る|nakanoryo
今年の3月からとあるグループランに参加している。 グループランとは名前の通り、複数人が集まって同じペースで走るものだ。 私が取り組んでいるマラソンを始めとする陸上競技は基本的には個人戦だ。 しかし人は集まり、そして共に走る。 矛盾を感じるこ...

沼の中での生活。

2023年3月。

引き続き、この沼の中での生活を楽しんでいる。

今月の半ばに迫ったとくしまマラソン2023に向けて。
悪あがきは悪あがき以上にはならないので、無理な努力はせず。
とはいえ何もしないで過ごすのも座りが悪いのでバランスを取って日々を過ごしている。

2022年11月に走ったちばアクアラインマラソンで残した3:04:00という記録。
約4ヶ月、日々の練習やハーフマラソン等を通して積み増してきた実力を元に、2:50:00切りを目指す。

地に足を着けながらも目標は高く持つ。

掲げた目標を元に、更にこの沼の旨味を追い求めていく。

何故毎日走っているんだろう。

答えはいくらでもある。
あり過ぎて回答に困る。
理由はいくつあってもいい。

あなたも走ってみませんか?
まずはその辺の地面を。

空を飛ぶより気持ちいいかもしれませんよ。

#ハマった沼を語らせて

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