2025年4月20日に開催された第35回チャレンジ富士五湖ウルトラマラソン。
私は初めてエントリーした。
種目はFUJI 4LAKES 100km。100kmのウルトラマラソンだ。
目標だった100kmマラソンの10時間切り。
いわゆるサブ10をこの大会で達成することが出来たので、この記事にまとめておきたい。

中盤以降にコース攻略や実際のラップ、振り返り結果について載せるので、気になる方は飛ばして読んでください。
1. なぜ富士五湖100kmを選んだのか
もともとは「いつかウルトラマラソン出てみたいなー。出るなら分かりやすいから100kmだなー。」というざっくりとした想いを持っていた。
そんな時、ランニング仲間との飲み会で「富士五湖一緒に出よう!決まりね!」とその場のノリで口約束を交わした。
きっかけはそれだけである。
富士山が好きというのも大きな理由だ。
天気の都合で頂上までは行けなかったけど、大学生時代に登ったこともある。
2023年には海抜ゼロメートルから富士山を登るRoute3776(ゼロ富士)にも挑戦した。当時は翌日から10日連続でブログ書いた。当時の自分すごい。休め。

詳しくは知らないけど、父親は富士吉田市出身らしいし。
自分のルーツが眠ってる場所と捉えてる。
大きくて強くて怖い存在。そんな富士山が好きだ。
2. 大会への準備
せっかくなので今シーズンを振り返っておく。
一言でいうと、尻すぼみのシーズンだった。
シーズン前半
夏場にしっかりと距離を踏んだ状態で迎えられたシーズンだった。
11月10日: 世田谷246ハーフ 1:18:45(PB)
11月24日: つくばマラソン 2:44:49(PB)
ハーフマラソンは初の78分台、マラソンは初の2時間45分切り。
マラソンに関しては出来過ぎてしまい、これ以上の記録を目指す気さえ失せてしまった。
シーズン後半
前半の結果に満足したのと、距離を走っておく必要がある時期に転職活動をしていたため思うような練習ができなかった。
完全に言い訳ではあるが、人生全体で見ると好判断だった。
3月2日 東京マラソン 3:15:47(ワースト2)
こんな状態だったので、富士五湖向けの練習というものは特にやっていなかった。
強いて言えば、2週間前に付け焼き刃の30km+20kmのセット練をしたくらい。
ただ、10時間は切りたかったので月間250kmくらいは継続して走り続けていた。
本当は300km以上走りたかったが、走る以外のことに熱中していたからそれはそれで納得している。
3. レース前日からレース直前までの過ごし方
東京在住のため、前日に新宿から高速バスで移動した。
使ったサイトはハイウェイバスドットコム。
これで高速バスを予約した。
割と直前に予約したから、時間が早めの便は埋まっていた。
※ウルトラマラソンに出るような人は常人より計画力のある人が多いので、彼らに合わせた早めの予約をおすすめする。
バスに乗る前は東南口にあるたつ屋で牛丼定食を食べた。
ここはサラリーマンの憩いの場みたいで、なんか好き。新宿だけど、新橋を感じる。

私が乗ったのはバスタ新宿から河口湖駅行きのバス。
WEB割運賃だと片道2000円で乗れてしまう。
呑気にスマホでイノセンスを観ながら過ごしていると、観終わる頃にちょうど私の降車ポイントである富士急ハイランドに到着した。
ここから1km圏内のホテルだったので、都合が良かった。
ちなみにホテルはもっと激戦。
私は仲間が取ってくれていた部屋を譲ってもらい事なきを得た。
つくづく人に支えられてばかりである。
チェックイン後は仲間と合流し、車に乗せてもらってほうとう不動に食事へ。
麺がもちもちで美味しかった。
ほうとうは店によって麺も味も結構な振れ幅でキャラクターが異なるようなので他も行ってみたい。
ほうとうと一緒にご飯も注文し、しっかりエネルギーチャージ。

食後はホテルの大浴場でサクッと身体を温めて、20時には就寝した。
ホテルで早寝するのは難しいので、めぐりズムを持ち込んだのだがこれは正解だった。
ランニングウォッチの記録を見ると15分くらいで眠れた模様。
一度トイレで起きてしまったが、無事2時過ぎに起床。
カステラを頬張り、モルテンを流し込みながら身支度を進める。
レースウェアに着替え、テーピングをしただけだが、不慣れなテーピングに時間がかかってしまった。
急いで歯を磨き、3時にホテルのロビーで仲間と合流する。
車に乗せてもらい、駐車場まで移動。
駐車場は振り分けられており、我々は富士急ハイランドの駐車場だった。
120kmの人はスタートが早いので、スタート地点からほど近い駐車場が優先的に割り当てられる模様。
10分少々バスに揺られて会場に到着。
お祭りの前のような高揚感と、眩しい照明に気持ちが昂ぶる。
Bブロックのスタート時間は四時半。
東京でもまだ始発電車が動いていない時間。
そんな時間に4000人超の大人が集い、ウルトラマラソンを走り始める。
狂気の沙汰だ!
4. コース紹介&各湖エリア攻略
COROSで記録した標高とコースをもとに紹介していきたい。
まずは標高データから。
なかなか起伏に富んでいることが分かるかと思う。
あと、見過ごしがちだけどシンプルに標高が高い。
一番低いところで826mある。
スカイツリーとか高尾山より悠に高い。

コースはこんな感じ。
反時計回りで、山中湖・河口湖・西湖・精進湖を巡る。
富士五湖で一番西に位置する本栖湖は120km/80kmのみで周るため、私が参加した100kmでは行かなかった。
こうしてみると、富士五湖は山梨側の富士の裾に沿って位置していることがよく分かる。

湖ベースでざっくりと区間を切ると以下のようになる。
🟢: 湖以外の区間
🔵: 湖の区間
- 🟢0km-10.5km スタート地点から山中湖始点
- 🔵10.5km-23.5km 山中湖始点から山中湖終点
- 🟢23.5km-46km 山中湖終点から河口湖(北側)始点
- 🔵46km-55.5km 河口湖(北側)始点から河口湖(北側)終点
- 🟢55.5km-57km 河口湖(北側)終点から西湖(北側)始点
- 🔵57km-61km 西湖(北側)始点から西湖(北側)終点
- 🟢61km-67km 西湖(北側)終点から精進湖始点
- 🔵67km-73km 精進湖始点から精進湖終点
- 🟢73km-78km 精進湖終点から西湖(南側)始点
- 🔵78km-83.5km 西湖(南側)始点から西湖(南側)終点
- 🟢83.5km-85.5km 西湖(南側)終点から河口湖(南側)始点
- 🔵85.5km-91km 河口湖(南側)始点から河口湖(南側)終点
- 🟢91kmから100km 河口湖(南側)終点からゴール地点
…ただのテキストだと分かりづらすぎるのでスプレッドシートでまとめてみた。


このように、4割超は湖が見えるコースとなっている。
湖区間だけでフルマラソン1本分以上ある。すごい。
湖が見える区間は、視界がひらけているので富士山もよく見える。
湖や富士山が好きな人はたまらないだろう。

そして走り始めの46kmは、湖のコースが13kmしかなかったという事実にも気付いた。
5. タイムマネジメント&ペース戦略
サブ10目標ということで、フラット換算(出力ペース)で5’20”-5’30″/kmペースを保とうと考えていた。
とにかく一定に。
10kmラップごとに5分の貯金を作って、5分以内にトイレとエイドを済ませれば、ラップ内で資金繰りが出来る。
汚い話になってしまうが、お腹の調子が悪く大を5回、小を3回したが、「これも織り込み済みであること」が心理的に味方してくれた。
ウルトラマラソンでは、インデックス投資のように複利が働くことはない。
先に大きな貯金を作っても、その貯金が複利で増えることはないのだ。
貯金を作ることへ躍起になって、疲弊して潰れてしまわないように、貯金の流動性を担保しながらのレース展開をした。
時間を味方にすることができないゲームでの戦い方、それは実力通りの力を出し続ける他ない。
これは貯金を作るゲームではなく、戦略通りにゴールへ自分を導くゲーム。
ペースは普段のジョグペースに近くて快適だし、トイレは多少並んでいても焦らず立ち寄ることができた。
100km走るには体力だけでなく、精神力も必要だ。
だからこそ、心理的負荷を最小限にするために自分の性格や特性に合わせたレース戦略を組む必要がある。
また、最後の7kmほどは250mアップの激坂が待ち構えている。
区間によっては、フラット換算(出力ペース)で5’20”-5’30″/kmペースで行くと、7’00”-7’30″/kmほどまでペースダウンしてしまう。
私はここも焦らず行くために、残り8km辺りのエイドで靴を履き直し、入念に屈伸などのストレッチをしてから再出発した。
今回はとにかく、「一秒でも早くゴールする。」という普段の考えを捨てた。
「戦略通りサブ10達成する。」ということを最優先に組み立てた。
だからこそ焦らずに済んだし、適切に休憩も入れられた。
私にとってフルマラソンのやり直しはハードルが低いけど、ウルトラマラソンのやり直しはあまりにもハードルが高い。
他の種目への適性も下がってしまうこの種目を、来シーズンに持ち込みたくなかったから、タイムより目標という精神で落ち着いてレースを展開した。
周りのサブ10ランナーは5’40″/kmくらいの一定ペースでエイド休憩は最小限にしている方が多かった。
だから、エイドの度に順位が変わる。
私の戦略はもしかしたら周りの人からは上がって下がってという風に見えたかもしれないが、本人としては快適だった。
6. エネルギー補給
持参して実際に摂ったものは以下。
エイドに立ち寄る前提だったので、身軽に挑んだ。
- 梅塩飴3粒
- エナジーグミ1袋
エナジーグミはこれ。
初めて買ったんだけどめちゃくちゃ美味くて1湖目の山中湖を走ってる間に全部食べちゃった。

美味くて止まらなかったのは誤算だった。
フルマラソンの補給はジェルをやめてこれ一袋にしてもいいかもしれない。美味しいから。
他はエイドでしっかり補給。
バナナとおにぎりと梅干しがあれば必ず食べた。
コーラも必ず飲んだ。
他にもうどんやパウンドケーキ、ブラックサンダー、エナジードリンク、ようかん、レーズン、オレンジ。
ポテトチップスが頻繁に展開されてたけど、ちょっとよく分かんなくて食べなかった。
信玄餅で有名な桔梗屋のお菓子もたくさん食べた。
7. 心理の浮き沈みとマインドセット
わりと常に淡々と走っていた。
レースシューズではなく、普段のジョグシューズでの出場というのもメンタルに良い作用があったのかもしれない。
私はAdidasのSupernova Rise 2を履いて走った。
近くで走っていた人とは誰とも被らなかった気がする。
アシックスとHOKA率が高かったように思える。
この靴は反発も柔らかさもそこそこで、オールドスクールとまでは言わないものの”ちょっと前のシューズ”のような味があり、私はすごく好きだ。
ハイテク要素はなく、ひたすらにベーシック。
淡々と刻み続けることが大事なウルトラマラソンにはぴったりだった。
メンタル的にキツかったのは精進湖に差し掛かった67kmあたり。
↑に載せたパウンドケーキを持った写真がちょうどその頃。
しかし!そのあとに待ち構えていたのは日テレのドラマ「ホットスポット」のロケ地だった!

精進湖・西湖あたりでサプライズでの仲間の応援もあり、持ち直すことができた。
仲間とホットスポットのロケ地に助けられ、最後の激坂まではひたすらピッチを保ちながら前進することが出来た。
激坂はひたすら耐えた。
最後の試練だと思って耐えた。
途中3分ほど早歩きに切り替えたが、なんかこれダサいなと思ってまた走り出した。
手前のエイドで入念に屈伸をしていたおかげか、筋肉が固まって小さくなってしまっていたフォームが少々改善され、推進力が戻ってきた。
あれは好判断だった。
8. 最後のひとしぼり。
最後の激坂が終わって残り約1km。
脚はなんかよく分からないけど残ってる。
なんなら、この間の東京マラソンより残ってる。
一緒に坂を登ってきた120kmの部の選手も足が残っているようで、2人でそのまま進んだ。
最終ラップを見たら4’58″/kmだった。
気合を感じる。
応援も多くなり、気持ちが高揚してくる。
ランニングウォッチの操作ミスで多少タイムに不安があったが、応援の声を聞く限り10時間切りは余裕でできそうだ。
緩めることなくそのまま競技場に突入し、フィニッシュ。
記録は9:53:17。
上出来だった。
実際のラップは以下。




9. 完走後の振り返り&学び
ここまで長々と書いてきたが、振り返りをトピック毎に箇条書きする。
10時間以内で完走できた要因
- 出力ペースを5’20”-5’30″/kmでキープできたこと。
- エイドを積極的に活用し、エネルギー切れを防いだこと。
- 早めのトイレで集中力をキープできたこと。
- 赤信号は手前でペースダウンして、動かない時間を最小限にできたこと。
- 赤信号待ちでしつこいくらいに屈伸運動をしたこと。
- 実際のペースは気にせず、出力ペースにこだわったこと。
次に活かしたい改善点
- スポーツドリンクの摂取頻度を上げる。
- ザックは不要だった、次はポケットの多いパンツで代用したい。
- もう少し早起きしてホテル出発前にトイレ籠もる時間を確保したい。
チャレンジ富士五湖ウルトラマラソンのエントリーを検討している方へ
後半は100km向けに書きます。
- 宿泊先・移動手段確保等、準備段階からウルトラマラソンは始まっています。
- エントリーはお早めに!参加賞のTシャツは先着順で、途中から強制的にタオルへ切り替わります。
- 100kmのスタート時間は早朝4時台です。
- スタート地点の富士北麓公園はアクセスがあまり良くないので、スケジュールをしっかり立てましょう。
- スタート直後は下り坂、みんなハイペースで進むので釣られずマイペースで巡航しましょう。
- エイドはしっかり活用して、食べ物・飲み物・声援を補給しましょう。
- 信号が結構多いです、赤信号が見えたらちょっと休みましょう。
- 92.4km地点にあるエイドで脚をほぐしてから激坂に挑みましょう。激坂でゾンビにならないように。
- ラスト1kmはフラットで走れます。ここで出し切りましょう。
10. おわりに。
仲間がサプライズ応援に来てくれて、一気に回復した私を載せて振り返りを終わりにしたいと思います。
信号待ちしていたら向こう側に居てくれた感動は忘れられない!
人の優しさと強さを再認識できる経験だった。
チャレンジ富士五湖ウルトラマラソン。
ありがとうございました。
機会があれば是非走ってみてください。